TNQ Writer
オージーの多くはリタイアしたら夫婦でのんびりキャラバンに乗ってオーストラリア大陸を周遊することが夢なんだそうだ。「それは素敵な夢ですね、半年くらいかけて周るんですか?」なんて会話をしたことがあったが、実は僕もそう言うことには憧れて来た一人だ。ベッドやキッチン、トイレやシャワーを備えた車で旅に出たら絶対楽しいだろうなぁと思ってきた。今回その夢の一部がようやく叶い、ケアンズからブリスベンまでの1,700K m強の道のりをキャンピングカーでドライブして来た様子を紹介したいと思う。
1日$1のレンタルキャンピングカー
ことのきっかけは、仕事でしているUberで乗せた乗客をジューシーカーレンタルというキャンピングカーの会社まで送ったことがあったが、その人は1日1ドルのキャンピングカーを5日間借りてブリスベンまで南下すると言うではないか。
最初の4日間は1日1ドルだけで、通常料金を払うのは5日目だけだと言うのだ。
本当にそんなに安く行けるのか?
経験上ブリスベンへ行くだけなら3日あれば足りるので、4日間も1日1ドルで借りれるならボーナスだ❣️
そう考えて子供達をブリスベンの住所まで送り届ける手段としてこれを選んだ。
このサービスは「iMoova」と言うところがエージェントであり、ケアンズに溜まり過ぎてしまったキャンピングカーを南方へ移動させたいと言う趣旨で始まったと聞いた。
ほとんどの利用者はブリスベンなどの南部から旅行を始め、最終目的地であるケアンズで彼らの旅を終わらせるらしい。
なるほどその逆は殆どいないのか…
理由は分からんがこっちにとっては渡りに船である、利用しない手はない。
ようやく長年の夢の一つが現実化するじゃん⁉️
でも実際に借りることができるのは初日の昼過ぎから。
そして最終日の3時には返す約束になるので実質丸3日程度しかない計算になる。やはりギリギリかも?
借りた車は?
借りたキャンピングカーはおでこがボコって飛び出したような形をしており、ナポレオンフィッシュを思い起こさせる。
なので今回借りた車には「ナポ」と言うニックネームにしよう。
実はこの手の車は全くの初めて。
借りる際に細かなブリーフィングがあったが、解説してくれるお姉さんの訛りが強く、理解できないところもあったのでブリーフィングのすべてを動画撮影。
途中で何度も見返えすことができたのでお勧めです。
僕はこちらの大型2種のライセンス(HR)を持っているので運転には自信があったが、なんせ長距離だし初めての車種だ。
任意保険に入るのが無難と判断し、1日45ドル、計180ドルの追加料金を支払った。
これで万が一の際のエクセス(修理が必要な際の自己負担金)が3,000ドルからゼロになった。
何も無ければ180ドルは無駄になるが、安心を購入すると考えれば問題ない。
それに万が一どこかが壊れたら困るし、最初から1日46ドルで借りたと思えば済む話しだ。
いざ出発!
車を借りてから一旦帰宅して息子と全ての荷物を放り込みいざ出発!
ハイウェイに入ってまず感じたことは「あれ?結構乗り心地悪いんちゃう?」だ。
コクピット周辺の配置に最初は慣れず、スマホを落ち着かせる場所すらない。
クッキングレンジはガタガタうるさいのでキッチンタオルを挟み込ませてノイズを半減させた。
トイレの扉はしっかり閉まらず、運転中はいつもバタンバタンとやかましいトイレだった。
日本車に比べインディケーター(ウインカー)とワイパーの配置が逆になることはよくある話だが、この車は右折しようと左手でインディケーターのレバーを上へ押し上げると「はい右だよ右」「おう右ね右」と二本のワイパーも連動した。
天候にお構いなく常に一緒に動いてくれるのだった。
ややこしい…。
そしてシャワーの水圧がちと足りない😩
3泊あるうち備え付けのシャワーを使ったのは初日の夜だけだった。
結構がっかり。
まだある!2日目の夜は結構しっかりと雨が降った。
3日目の朝に気付いたのだが、中央のベッド付近は雨漏りで濡れていた。
誰もそこで寝なかったことは幸いだ。
本来は娘も同行させるつもりでいたのだが、急遽来なくなって逆に良かったかもしれないな…。
あとは左側のヘッドライトが切れていたことぐらいかな?
しかし全然大したことではない、何も問題ではないね?
息子はご満悦だ!
いざ宿泊!
初日の夜はタウンズビルにある無料カーパークにて一夜を過ごすことにしていた。
ガソリンスタンドとバニングスというホームセンターの間にある無料駐車場にはトイレだけが有り、それ以外に必要なものがあればコンビニで買える。
さすが無料なだけあって混雑していた。
午後6時を過ぎていた割には運良く停めるスペースを見つけた。
慣れている人ならここで十分だと思うが、僕にとっては非常に心細く、オートキャンプ場を予約しておくべきだったかも知れないと後悔した。
ガスはある、でも電気はどれだけ持つのか?
車内の電灯は全てLEDだが、換気扇はしっかり電気を食うようだ。
換気扇を動かさないとガスは使えない仕組みになっていると説明を受けたので、それが不安要因になり料理を諦めた。
翌朝エンジンが掛かるだけの電気は残るのか?
こちらの無料駐車場はガソリンスタンド周辺につき炎の使用は禁止。周囲は使っていたけどね…。
結局夕食はシリアルとフルーツと言う、夜なのに朝食みたいなメニューになった。
せっかくお米も予め炊いたものを冷凍させて持参したんだけど、備え付けの電子レンジも電源がなくて使えなかった。
試しにシャワーにも軽く入ったがそそくさと出たし、息子は入りさえしなかった。
寝心地は悪くなかったが、なにせ場所はガソリンスタンドの近く。
トラックの往来がひっきりなしだったので何度か起こされた。耳栓持って行けば良かったな!
寝不足のまま2日目の朝を迎えたが明るくなればこっちのもの、何か問題あったって助けを呼べるでしょう?
ちょっと余裕が出たのでまずはコーヒー、そしてオーブンも使ってみた。
良いぢゃん良いぢゃん!これがやりたかったのよ!
南下は続く
天候もまずまずでご機嫌に走っていたら、同じ車種を運転するドライバーはこちらに向かって手を挙げてくる状況に何度か遭遇した。
だいたい5台に3台はハイファイブを送ってくるではないか!
あれは大学2年生の時だったか、北海道をバイクツーリングしたことがあったが、すれ違うライダーのほぼ100%がブイサインを送ってきたものだった。
今回初めてこちらに手を振ってきたキャラバンドライバーを見た時、すっかり忘れていた30数年前の北海道の光景が鮮やかに蘇り、懐かしさでいっぱいになった。
それ以降手を挙げるドライバーを意識した。
おかげでこちらも同型車を見つけたら手を挙げる習慣が身に付いてしまった。
しかしブリスベンに近づくにつれ手を挙げてくる人が減ってきた。なぜだろう?
やはりノースクィーンズランドへ向かうドライバー達の高揚感がそうさせていたのかな?
珍客?
道路の片隅にカンガルーの朽ち果てた死体が転がっている光景はもう珍しくも何ともないんだが、今回驚いたのは甲羅の長さ約30センチの亀が道路を渡ろうとしていたのを目撃したことだった。
もちろん見たのは一瞬だったが両足引っ込めてたけど、首だけは長く伸ばしていたのが印象的だった。
交通量の多い昼中にハイウェイを渡るつもりなんだろうか?いや無事に渡り切れるわけがない。
渡り始めた途端タイヤに弾かれて、それこそスーパーマリオのキャラクターの如く、猛スピードで来た方向へと弾き飛ばされるに違いない。
でもそれで無事に戻れるなら、それはそれで問題ないか…。
でも真上に乗られたら耐えられるんだろうか…。
あまりに単調な景色に他に考えることもなく、カメについての妄想を膨らませながら走っていた。
初夜の失敗を糧に!
2日目の夜はオートキャンプサイトを抑えた。
今夜は電源確保と水の補給、汚水も捨てなければ。
前日のうちにあれこれ検索していたら「Hipcamp」というアプリを見つけ、それを使って予約を入れておいた。
場所はマッカイ、タウンズビルからさらに南へ5時間程で到着する街だ。
せっかく釣竿も積み込んだし、息子も釣りを楽しみにしていた。
滞在した「mycow」には川があり、釣りも出来ると紹介されていたので選んだ場所だ。
運転は早めに切り上げて午後3時過ぎにはチェックインしようとした。
ところがHipcampからはコンファメーション(予約確認書)が送られて来ていたのに、キャンプサイトのコンピュータには僕の予約は反映されていなかった。
「おいおいおい!またもや電源喪失ですか?」と心配になったが、幸い空きがあったので事なきを得た。
レセプショニストは38ドルですと言ってきたがこちらは「Hipcamp」を通して48ドルを支払い済み。
でも直接払えばその分安いんだな。次回来ることがあればダイレクトに申し込もう。
車を所定の場所に停め、エンジンを切る前にガスの元栓をオープン!これで冷蔵庫は大丈夫。
続いて電源に繋ぎ、息子は明るいうちから車内全ての電灯に火を入れた。
はえ〜よ!まぁ夕方近くだからいっかぁ。
そして汚水の排水口をホースに繋ぐ。
難しいことではないが、これら全てがやってみたかった新しい経験だ。
夕方1時間ほど裏手の川で釣りをしたが、釣果はゼロ、潮の干満の影響を受ける川だったためか、ど干潮時に当たってしまい、残念ながらボウズとなった。
気を取り直して夕食の支度を始めた。
前日予定したステーキが持ち越しとなり、食材も余り気味だったので品数の多いディナーとなった。
メニューはステーキに加え、蒸し野菜はにんじんとブロッコリー、炒め野菜としてカリフラワーとマッシュルームの出汁醤油炒め、焼きとうもろこしはオーブンで焼き、デザートに葡萄とヨーグルトって感じ。
息子も美味い美味いと食べてくれた。
食器洗いも車内でと思ったが、やはりキッチンは小さいし、洗った食器を置く場所も狭いので、キャンプサイトの共同キッチンを利用した。
車に搭載してるガスだってどれくらい持つか分からないから、節約できるところは節約しなければ。
そしてシャワー。
こちらもサイトの施設を利用、たっぷりと熱いお湯が出てくれて、とても幸せなひとときだった。
車内のシャワーも今日は電源に繋いでいるからもしかしたら水圧も強くなっているかなと期待したが、前日と同じでしょぼしょぼだった。
本当は「恐るべしRV車、侮れないな!」とか言いたかったんだけど、きっと新型ならそう言えたのかも知れないな!
ちなみにこちらのキャンプサイトはフリーWi-Fiもあったし、トイレの汚水を捨てる場所もあったので助かった。
でもハイウェイの真隣だったので騒音面でちょっと残念、前夜に続き寝不足気味でした。
大移動3日目
マッカイから次のキャンプ地までは8時間程度の運転を予定した。
mycowを午前7時に出発しても暗くなる前に着けるかどうかだろうと思っていたが、やはり途中の休憩や給油などで時間が取られ、次のキャンプ地スーザンリバーに着いた頃にはすっかり暗くなっていた。
日の短い冬場だし、仕方ないね。
それにしても燃費が悪い。
風に煽られフラフラしながらも一生懸命走ってるって感じ。
おまけにナポちゃんのおでこにぶつかる向かい風も結構キツいなぁって思うような走り。
クルーズコントロールを使って走るものの、振動から来る膝への疲労感も半端ない。
やはり8時間走行は無謀かな?
でもそうしないと期限内にブリスベンまで辿り着けない。
お待ちかねのキャンプファイヤー
ようやく3日目のキャンプ地に辿り着いた。
息子が楽しみにしていたことの一つにキャンプファイヤーもある。
ここのキャンプサイトではファイヤーウッド一袋が15ドルで買えたのでファイヤーピットも借りて焚き火を楽しんだが、息子はマシュマロを持参しなかったことを相当悔やんでいた。
甘党過ぎ!
ここのサイトでもシャワーを借りた。
ケアンズからずっと南下を続けてきたが、6月ということもありマッカイよりかなり寒く、思いっきり熱いお湯を浴びなければ震えが止まらなかった。
小さな焚き火では全然身体も暖まらないもんな!
早朝の釣り
ここのサイトでも釣りができると紹介されていたので選んだわけだが、最終日の移動は4時間だけなので、朝は早めに叩き起こして釣りを楽しませてあげようと思っていた。
ところが釣果はまたまたゼロ、チェックイン時にサイトのオーナーが魚釣れなくても文句言うなよと意味深なことを言っていたが、まさか当たりもないとはね…。
到着した時は既に真っ暗だったので分からなかったが、周辺には池やダムが幾つかあり、大きな牧草地の中にある乗馬クラブの一角のようだった。
寒さに加えて通り雨が2度やってきたが、そのお陰で素晴らしい虹が見られた。
あまりに濃い虹の色に僕らは大興奮。
そしてとても近くに見えたことがこのサイトでの一番の思い出になった。
時間に余裕があると思い、お世話になったダブルベッドをダイニングテーブルに戻し、ゲージをチェックし水の補給、汚水の排水などを済ませていたら気づけば10時を過ぎていた。
やばい!急がねば…
終盤
キャンプサイトを後にし一路ギンピーという街を目指し車を走らせる。
途中の街では渋滞に捕まり、迂回路を模索。
ハイウェイではGoogleマップが前方の事故渋滞を察知し、迂回路を使えば16分短縮できると教えてくれた。
ナポ号は事故渋滞に飲み込まれる前にハイウェイを降りれたが、渋滞に向かっていく車たちを右手に見ながら降りていった。
前後の車やトラックも恐らくネットでその情報を掴んだのだろう。
同じ動きをする車両が結構いた。
それにしても早い段階でこの簡易スマホホルダーを作っておいて本当に良かった。
経路の案内に従い再びハイウェイに戻った。
それでもまだ2時間以上走らなければならない。
速度超過しないようクルーズコントロールを使いながら先を急ぐ旅となった。
ブリスベンまであと10kmというところでガソリンが心配になり最後の給油。
結局この旅行中に使ったガゾリンの代金は500ドルと少し。
150ドル分はレンタカー会社が出してくれたが、とても$150だけではケアンズからブリスベンまで辿り着くことは出来ないことも分かった。そりゃそうだ!
午後2時までには息子の家に到着する予定でいたのに結果30分も遅れての到着となった。
慌てて荷物を下ろし、トイレ容器を空にさせてもらい、別れを告げ、返却場所へとダッシュで車を走らせた。
相変わらず交通量が多く土地勘もないので予想以上に時間が掛かる。
途中忘れ物に気づいたがそれどころではない。3時までには!
結局到着したのは3時20分で間に合わなかった。
オフィスは既に鍵が掛かっていた。
で、よく見るとオフィスのクローズ時刻は午後2時と書かれている。
あれ?あれあれ?
土日は2時に閉まるの?
じゃあなんで3時までに持って来いなんていうの???
じゃあ4時でも良かったんじゃん⁉️
鍵は返却ボックスへどうぞ!だと?なんだよ、慌てる必要なかったじゃん!とぼやいたところで始まらない。
とりあえずはこの4日間無事に僕らをブリスベンまで運んでくれたナポの後ろ姿に別れを告げ、Uberで空港へと向かった。
なんだって最初から上手くいくことはほぼない。
でも確実に経験値は上がった。
次回また借りる時はもっとスムースに出発できるはず。
何より怪我や事故なく、無事に旅程を終わらせることが出来たことには本当に感謝。
そしてこれを多くの人と共有出来たらより一層「やって良かった」ことと言えると思うし、みなさんの旅心に火を点けられたのなら大成功ではなかろうか?
諸々忘れないうちに今、ケアンズへ飛ぶ機内で一人書いている…。